猫同士が出会ったとき、片方がじっと立ち止まり、もう片方におしりのにおいをかがせている――
そんな光景を見たことはありませんか?
初めて見る人にとっては少し不思議で、
「なぜ逃げないの?」「怒らないの?」
と感じるかもしれません。
でも実はこの行動、猫の世界ではとても礼儀正しく、理にかなったコミュニケーションなのです。
猫にとって「におい」は名刺のようなもの
猫は人間のように言葉を使いません。
その代わりに、においから多くの情報を読み取ります。
おしりの周りには、アポクリン腺と呼ばれる分泌腺があり、
そこから個体ごとの情報を含んだにおい(フェロモンを含むと考えられています)が出ています。
このにおいから猫は、
- だれなのか
- 健康状態はどうか
- 今の気分は落ち着いているか
- 敵か、仲良くできる相手か
といったことを瞬時に判断しています。
つまり、猫がおしりをかがせるのは
「どうぞ、確認してください」
という意思表示なのです。
じっとしているのは「信頼」と「余裕」のサイン
猫にとって、背中やおしりは急所です。
そこを相手に向け、動かずにいるというのは、
「あなたを敵だと思っていません」
「争うつもりはありません」
という、はっきりしたサイン。
これは、アポクリン腺のにおいを通じた情報交換を
安全に行うための態度とも言えます。
堂々として見えるのは、
自分の立場や状況を理解していて、無用な衝突を避ける判断ができているからです。
なぜ「かっこいい」と感じるのか
この行動を見て「かっこいい」と感じる人は少なくありません。
それは、
- 無駄に威嚇しない
- 相手を尊重している
- 自分の身をわかっている
こうした要素が、静かな自信として伝わってくるからでしょう。
猫の世界では、
においという見えない情報を使って関係性を調整することが、
とても洗練されたコミュニケーションなのです。
途中で嫌になったらどうする?
猫はとても正直です。
もし途中で不快になれば、
- しっぽを強く振る
- 耳が横や後ろを向く
- 体がこわばる
といったサインを出します。
これは
「情報交換はここまでにしてほしい」
という合図。
この段階で距離を取るのが、猫社会のマナーです。
猫の行動を知ると、もっと優しくなれる
猫がおしりをかがせる行動は、
支配でも我慢でもありません。
アポクリン腺からのにおいを通じて、
相手を理解し、無用な争いを避けるための知恵。
意味を知ると、
猫たちのやり取りが、少し誇らしく、愛おしく見えてくるはずです。
